エリック・ロメール

lo-tus2010-01-23

今朝の朝刊の蓮實重彦さんの記事で、エリック・ロメール監督が1月11日に亡くなられたことを初めて知りました。とても好きな映画作家だったので残念です。ご冥福をお祈りしたいと思います。
作品を初めて見たのは確か10代の後半、「海辺のポーリーヌ」と「緑の光線」を映画館で2本立てでやっていた、その時だったと記憶してます。夏のバカンスの海辺を舞台に若いカップルが繰り広げる、たいした事件は起こらない淡々とした映画。
その他の作品もそうですが、ロメール作品ほとんど全てにおいて、全体のストーリーよりもむしろ細部、独特の映画的リズムの中で描かれる、そのシチュエーションと男女の対話が殊更に面白いです。だからストーリーよりも、あるシーンやある言葉が印象に残ります。
しかし初めて観たときは、「フランスのカップルというのは、こんな回りくどくて小難しい会話をするのか?」と、たいそうショックだったのをおぼえています。当時10代だった自分には理解不能だった愛の理屈とか心のヒダとか・・・。「好き」と「嫌い」の間には、100万通りの態度があるものだと教えてくれたのがロメール監督です。
それから、すごくハッピーでも無ければ、すごく悲しくもない映画のラストも。本来悲しい話でもハッピーな話でも、独特のシニカル&コミカルな視点で、さまざまな解釈を許す奥行きを与える映画になっています。
「得をしたことが損になったり、損したことが後で得になったり。結局誰の人生もプラスマイナス・ゼロ。つまり生きるしかない!」・・・これは僕のすごく個人的な解釈ですが、ロメール監督はそうやってとてもクールな態度で人間讃歌を表明していたのではないだろうかと。ニヒリスティックだけど熱い人。
決して説教臭くならず、抜群のセンスで鮮やかに教訓を残してくれた映画作家に、アリガトウとサヨウナラを言います。