惑星ソラリス
『惑星ソラリス』を観ました。かれこれ5、6回目。この映画、舞台が宇宙なので、一応SFに分類されているみたいですが、なかなかどうして、それにとどまらない深い世界があります。実に静かで淡々とした映画なので、観ているうちに眠ってしまうことがあります。*1でも好きです。
この映画の中で、何度見てもすごいのは、宇宙船の中で30秒間だけ訪れる無重力状態の浮遊シーン。ほんの束の間、主人公のクリスとその妻*2が無言のまま抱き合い浮かぶ、静けさに満ちたシーンがあります。宇宙の果てで、二人を縛るいろんな「重力」*3から解き放たれて、過去や自己や愛と向き合います。少し語弊があるかも知れないけれど、こんなシチュエーションを「ロマンティック」と言いたい。
昔のSFや特撮、ファンタジーから、最近の気味が悪いぐらい精巧なCGまで、人が浮遊するシーンは山ほど見てきましたが、タルコフスキーほど美しい浮遊シーンを撮った作家は他にいないでしょう。*4息を飲むような映像は、決してテクノロジーによってできるものではなくて、いかにそこにポエジーがあるか。「映像の詩人」なんていう月並みな異名が、タルコフスキーだけは似合います。