飛行船日和

lo-tus2006-10-12


「Lo-tusさん!ほら、アレ、アレッ!」
仕事仲間が興奮気味に窓の外を指さすので、身を乗り出して見てみると、秋の空にはでっかい銀色の風船・・・じゃなくて、飛行船が浮かんでいた。
「おぉ〜!」
僕もいっしょに、ワケもなく喜んだ。
飛行船を見ると、人はとにかく嬉しくなるらしい。

実はつい昨日も同じようなことがあった。また別の人が「さっき、飛行船見たよ!」って、これもまた得意げに言ってたっけ?やっぱり飛行船に遭遇すると、誰もが嬉しくなるらしい。そして誰かに話したくなるらしい。


飛行船は、空に浮かんだ白昼夢。どこからワープしてきたのか?いつだって音もなく突然現れる。昔は空の花形だったけれど、今は時代がちがう。まるで隠居のおじいさんみたいに、前触れもなく不意に顔を出すところがいい。
ジェット機のスピードも、ヘリコプターの機敏さもないけれど、飛行船には何かしら、今の交通機関が失ってしまった“エレガント”がある。

あの飛行船はどこから来た?目的は?行き先は?頼めば乗せてもらえる?(乗せてよ!!)さて、あれは船なのか飛行機なのか、どっちだと思う!?
そんな謎めいた物体だから、胸の奥の祝祭的気分を盛り上げるのだと思う。みんな、遊園地でアトラクションを待つ子供の顔になる。

僕は飛行機以外で空を飛んだことがない。飛行機は旅をする。でも飛行船は浮遊する。
秋晴れの空、あの巨大な風船に乗ってゆっくり地上を見物する気分はどうだろう?・・・その地上はといえば今、どこかの国の核問題が騒がしいが・・・どうか、こんな穏やかな空は奪われたくない。