真冬のユーリ・ノルシュテイン

lo-tus2007-02-01


いやー、寒い。こういう寒い時はどこにも行かず、暖炉のそばのロッキングチェアで(ウチにはそんなもんありませんけど)、めるひぇんの世界に浸りたいもの・・・、というこで今日はロシアの偉大なアニメーション作家、ユーリ・ノルシュテインのはなし。アニメーションと言っても、今日本で普通に言う「アニメ」とは全く違います。彼の得意とする切り絵、モンタージュなどのアナログ・コマ撮り手法によって紡ぎ出される詩的な映像世界は、初めて映画館で見たとき、特にアニメーションが好きというわけではないボクだって、本当にタマゲました。動き、光、ストーリを含めた全てが・・・ほんっとに美しかった!特に『話の話』『四季』『霧につつまれたハリネズミ』などがフェイバリット。子どもも大人も楽しめると思います。
さてこのノルシュテイン氏、何年か前に、来日した時の様子を追ったNHKのドキュメンタリーが放送されたことがあって、その人柄も実に魅力的でした。
番組の中で、日本の若いクリエーターたちが自分たちの力作をノルシュテイン氏に見てもらうというシーンがありました。持ち寄られた作品はどれも凝りまくったCGで、テクノロジーを駆使した映像作品ばかり。これにはさすがのノルシュテイン氏も驚くか・・・?と思ったら違うんです。ひと言「ダメだ。君たちの作品は頭の中だけで考えた作品ばかりじゃないか?もっと日常の自分の、五感で感じたものを表現しなさい!」と一喝。その深みのある言葉には、ボクもテレビの前で「はい、先生!」と背筋を伸ばしてしまったほど。
またノルシュテイン氏の自宅があるモスクワでの普段の生活も紹介されていました。60歳を過ぎた今も、日課の散歩と水泳を欠かさないとのこと。この時も雪の公園を散歩していらっしゃいました。そこまではよかったのですが、公園の池の氷を割ると水着になり、なんと極寒の池に入っていくではありませんか。その瞬間はテレビの前で、今度は「先生!、無茶はやめなよ!」と手を伸ばしそうになったほど。そんな心配をよそにノルシュテイン氏は「熱くてやけどしそうだよ!」と満面の笑顔で遊泳。やはりこの方、普通の人の何百倍も五感を使ってらっしゃるのだと納得しました。日本の山伏さんでも、あんな冷たい水では修業しないでしょ・・・。だってモスクワ、氷点下13度!
こういう過激な精神から、ああいう静謐な映像のポエジーを生むなんて・・・、そういう人にこそ「カッコいい」という言葉を用いたい。
1980年から制作しているゴーゴリ原作の『外套』はまだ完成していないとか。10秒撮るのに、2〜3ヶ月かけることだってあるそうです。