LUNACY

lo-tus2007-07-29

「あなたに本当の自由を見る覚悟はあるだろうか」
このキャッチコピーに釣られて映画館へ足を運びました。「問題作」しか作らないチェコ映画作家ヤン・シュヴァンクマイエルの「Lunacy」。
自由主義とか、夏休みの自由研究とか、水泳の自由形とか、なぜあんな不自由なものに「自由」いう名がついているのか、僕は以前から不思議でした。自由と言いながら本当は規則がある。しかし人間だれしも何のルールもない世界につれて行かれて、「本当に自由に、思い通りにしていいよ」といわれたら、困ると思うし、恐いと思うんです。だから冒頭のキャッチコピーが、なんだか気になった。
さてさて、夏は怪談シーズンですけど、この映画、並の怪談よりもずっとコワイ話です。エドガー・アラン・ポーの小説をモチーフにしていて、舞台はいつの時代のどこの国かもよく分からない精神病院。その病院の患者たちは、院長の方針で自由気ままに過ごしているのですが・・・、実はその自由の裏側にはとんでもない抑圧された過去があって・・・。
シュヴァンクマイエルのシュールでアナーキーな映像全開。脳のヒダにジワーッとしみ込んでくる暗喩的なイメージのオンパレード。特に今作はこれまで以上に背徳的でエロティックです。

「すべての革命は自由の名のもとに始まり、新たな抑圧と操作で終わる。」チェコ出身の監督らしいお言葉。残念ながらこれは真理。
全体的に悪夢のような映画でしたが、実はあの病院は実社会(世界)の縮図。社会主義(抑圧)と自由主義(欲望)を両方経験したあと、「どっちも、ロクなもんじゃない」・・・シュヴァンクマイエルがそう嘆いえいるように聞こえました。準主演のアンナ・ガイスレロヴァーがよかった。