Birth Of Summer


昨夜の出来事。
庭に停めた車の前輪で
蝉が生まれようとしていた。


本当は車を動かせたかったけど
世界の空気に触れたばかりの無垢な体が
あんまり白くてきれいだったので
そのままそっと・・・。


満月の夜は何かが生まれるというけれど、
それは本当だ。
深夜に目覚めた翅は
空の月と同じぐらい
白く光っていた。


触れると汚れそうな気がしたから
触れてはいけないもののように思えたから
そのままそっと・・・。


もう何時間か後には
降り注ぐ無数の蝉時雨。
その中のひとつになるんだろう。
夏が生まれようとしていた。