インランド・エンパイア

lo-tus2007-08-19


3時間スクリーンに釘付け。久々に摩訶不思議な映像に酔いました。
今世界で最も新作が待ち遠しい映像作家、そして世界で一番メジャーなインディーズ監督、デビッド・リンチの「インランド・エンパイア」を見てきました。
前作の「マルホランド・ドライブ」という大傑作の次はどんなものが来るか楽しみでしたが・・・、この最新作は以前にも増して、ますます「解らなさ」に磨きをかけてきましたね。
普通の推理サスペンスだと、最後に謎がとけてスッキリ解決!ということで納得するのですが、リンチの場合は、謎が謎を呼んだまま最後まで何一つ明快にはなりません。いつの話か?誰の話か?時空を超え、自己と他者の区別を超え、どんどんストーリーがブレていきます(蛭子能収のマンガにも例えられるように)。少しずつブレていき、最後には一周回って元の戻るとか・・・。しかし、そういう謎の連鎖がだんだん快感になっていくから不思議。「謎解き」がバカバカしくなり、次はどんな謎を用意してくれているのか?、どんな異次元に連れて行ってくれるのか?・・・いつの間にか自分の意識も浮遊しています。
今回もいかにもリンチ的な映像が満載。赤いカーテン、強烈なフラッシュライトに小刻みにブレるカメラ、悲鳴、踊り狂うダンサー、ゴシップ、女性、予言、ウサギ人間(謎の水先案内人)などなど・・・。それから、ゆーっくり移動するカメラとか、ちょっとしたアイテムがやたらと不気味に見えたりとか。重低音のサウンドも。すごかったです。
デビッド・リンチは、インドの瞑想法を実践していて、それは60年代にビートルズミック・ジャガーが傾倒していたものと同じなんだそうです。映像のインスピレーションは夢・幻から来ているのでは?夢はいつだって、辻褄が合わないし説明不可能なものだから。
さて「インランド・エンパイア」について監督自身は一言「A Woman in Trouble(女の悩み)」とだけ答えていました。どんどん邪悪な夢の深みにハマっていく主人公を見ていると、まったくそれは言い得ているなと・・・。でも毎度のことですが、ラストのラストは、デビッド・リンチの愛を感じます。それは何かと言うと・・・、やっぱり言わないでおきます。