澁澤龍彦の古寺巡礼

lo-tus2007-08-22

澁澤龍彦」と「古寺巡礼」という言葉の取り合わせが意外な感じがして読みはじめた本。そう、シブサワ・ミーツ・ジャパネスク。
僕は今まで、さほど澁澤さんの本を読み込んでいるわけではないので、とにかくイメージが先行していたのです。サングラスの似合う人、斜に構えた人、博学で幻想的で美にうるさくて・・・といった具合に。しかしこの本を読んでそんなイメージが少し変わりました。
本の内容は、澁澤さんが愛し訪ねたお寺に関するエッセイ(旅日記)の抜粋と、奥さんの澁澤龍子さんのコメント、ご夫婦で撮られたスナップ写真、それから各スポットの観光案内などで構成されています。各章のテーマが面白くて、例えば「画家と寺」「異端児の寺」「オブジェと異神」などなど、目の付けどころがやっぱり澁澤的。京都・滋賀・奈良方面のスポットでは、自分も何度か見ているあの寺やその仏像たちも多数紹介されていたのでうれしくなりました。
そもそも澁澤さんは旅など嫌いなインドア派だったのですが、結婚後奥さんに誘われてほうぼう旅行をするようになり、いつしか旅行大好きになっていたんだそうです(女性の影響は偉大)。この本にハートフルな雰囲気が漂っているのは、ご夫婦で共有された幸せな時間の記憶にもなっているからでしょうね。


さっき「イメージが少し変わりました」と言ったのは、妻・龍子さんの文章によるものです。世間的なイメージとはちょっと違う澁澤さんの、ごく日常のお茶目な一面が語られていたのが旅のエッセイと同じぐらい、いやそれ以上に面白かった。彼女にしか見えない、もう一人の澁澤さんなのでしょう。
例えば、演劇を観てくるとすぐに影響を受けて家で物真似をし「どうだ、そっくりだろ?」などと自慢する話とか、禅寺に行った時はついはしゃぎすぎてお坊さんに怒られた話とか・・・。
これはねえ、分かります。僕もほとんどいっしょです。もしかして自分のことを書かれているのかと思って、この文章を読んでドキッとしたほど。
なんだか急にシンパシーがわいてきましたよ、澁澤さん。
ね、タッちゃん。