(25)秘仏に出会う

lo-tus2007-11-13


毎年春と秋の恒例行事「京都非公開文化財特別拝観」。この秋は17スポットの公開があって、たまたま無料招待券が手に入ったことと、そしてたまたま家の近くにあったという理由で尊勝院(そんしょういん)というお寺に行ってきました。今回は何の予備知識もなしで、突発的に出かけることに。
京都のお寺には、建築探訪や見仏という目的で、いろいろ行っているつもりだったのですが、この尊勝院はノーマーク。この秋まで知らずに過ごしてきたとは迂闊でした・・・、というより京都はお寺がありすぎるので、見たことのあるお寺ってまだまだごく一部なんでしょうね。
場所はウェスティン都ホテルにほど近いところ。粟田神社の脇から細い坂道をどんどん登って、風情のある住宅街を抜けたてっぺん。爽やかな天気だったのでキツイ上り坂も気にならずあっという間に目的地へ。本堂はこぢんまりとしたたたずまいで、昔話に出てきそうな「山寺」のような雰囲気でした。いつのまにかだいぶ登っていたらしく、眼下に平安神宮の大鳥居が眺められたりして爽快。
そんな和やかな気分で本堂に入ると、様子が一変しました。薄暗くてはっきりとは見えないけれど奥のほうに何やらスゴそうな仏像が横並びしているではありませんか。さほど大きくはなけれど、凝った造形の仏像のシルエットがいくつも浮かんでいます。
さてこの特別拝観では、毎回市内の大学の協力で、学生ガイドさんが受付や説明をしてくれます。説明が初々しかったり、たどたどしかったりして、かえって新鮮。すごく真面目に説明してくれるので、ヒヤヒヤしながらも楽しみにしています。世間擦れしたお坊さんが、笑えないダジャレ交じりに案内してくれるようなお寺よりよっぽど気持ちがいいからね。
そうして学生さんの説明を何気なく聴いていると、真ん中の御本尊の元三大師(がんざんだいし)像は大師自作だそうで史上初公開、そしてその右側に立つ米地蔵(よねじぞう)尊像も1200年間も人目に触れず今回が初公開だそうです。学生さんの棒読みの説明と、この歴史的なダブル初公開のギャップが可笑しかったです。何の予備知識も入れず来たので、この時初めて、あ、今自分はすごく珍しい姿を拝観しているのだと自覚しました。これらの仏像と一緒に、千手観音像や毘沙門天立像も並んでいて(造形的にはこちらのほうが素晴らしく感じ、自分としては好み)、思いがけず隠れた仏像スポットを発見したのでした。

*米地蔵尊像 &千手観音像
今まで見せてくれなかったものがどうして今年公開されたのか、そのへんの事情は判りません。しかし僕には、どうして「秘仏」というものが存在するか?ということのほうが不思議です。そもそも仏像は拝むために作られるものなのに、作っておいて誰にも見えないように隠すなんて!なんだか倒錯してるよな〜。
そ、その時です。天から声が!!!
「カタチあるものにとらわれてはならぬ。仏像は仮の姿。本当の御仏はオマエの中に、オマエ自身がつくるモノなのじゃ〜、ハッハッハッ・・・」
そう言い残して秋の空へ消えていった後ろ姿は・・・、待ってください!お釈迦様!!!・・・なんて脚色はやめましょう。