それは、太陽のせい・・・

lo-tus2008-01-27

ピンクフロイドが音楽を担当した映画「MORE」(1970)を見てきました。アントニオーニの「砂丘」もそうだけど、あの音楽を聴くと迷える若者=ヒッピーのテーマ曲のよう。ピンクフロイドの音楽って、実にビジュアル的というか、映画音楽にぴったりなんだと思います。
10代の頃初めて聴いたピンクフロイド。今聞き直すと「サイケ」というよりも、古典的で堅牢な交響曲のように聞こえます。その後のテクノ→アンビエント・ハウス→チルアウト→最近のエレクトロニカという、もっとトランシーでアブストラクトな音楽体験を通過してきた後だから。でもピンクフロイドが、それらの音楽のルーツの一つになっているというのは言えそう。
さて映画の方は、Overdoseするヒッピーの男女の話。太陽とドラッグの対比が面白かった。特にイビサ島(楽園のイメージ)の太陽の光が印象的で、それは「気狂いピエロ」や「異邦人」の太陽に通じるような、眩暈を誘う強烈な光。そもそも西欧人は太陽を求めるバカンスが大好きで、ヒッピーカルチャーは若者が精神的バカンスに出た時代ではなかっただろうか?太陽は、服用法を間違えると身を焼き尽くす劇薬になる事を知らずに・・・。
翔んでいるはずが、どんどん堕ちている。天国と地獄が紙一重になった危うい世界に、何とも気怠いピンクフロイドの曲。ドラッグにハマっていくにつれて、主人公たちのファッションや部屋のインテリアが、どんどんサイケっぽく、東洋っぽくなっていくのも見どころ。今ヒッピーは形を変えましたけど、あの最高にクールなサイケ・ファッションが何度もリバイバルするのを見ると、時代が残した唯一の遺産のように思えます。
異郷を夢見て、みんな旅に出た時代だったんですね。「Summer Of Love」は長くは続かなかった。しかし今でも、誰もが胸のどこかに異郷を秘めているような気がします。