(28)緑のバリエーション

lo-tus2008-05-12

風薫る5月、今は茶摘みの季節でもあります。茶道を習っている家族・友人に誘われて、「品質本位の茶づくり」でその筋では有名な宇治茶の老舗・丸久小山園(まるきゅうこやまえん)さんの工場見学をさせていただきました。はるばる宇治川を越えて。
そもそも僕は、子どもの頃から工場見学というものが大好きです(NHK「はたらくおじさん」が懐かしい)。職人さんの手仕事を見ているのも面白いですが、恐竜のような大きな機械の中でシステマティックかつダイナミックな力学によって大量加工・生産されていく「工場」を見るのもやはりワクワクするものです。今回は抹茶の製造工程を見せていただきました。お茶(煎茶ですが)は毎日飲んでいるのに、こうして「現場」を見るのは初めてのこと。
抹茶専用の茶園で新茶を手で摘み取り、その葉を何度か蒸したり乾燥させたり撰別したりして、最後に石臼で数ミクロンの粉状にしたものが抹茶です。各工程で、お茶の葉の緑色が幾通りにも変化していくのが分かります。それぞれの葉を少し食べさせてもらいましたが、渋かったり甘かったり、味も変わっていきます。一枚のお茶の葉でも、こんなにさまざまに色・風味が出るもんだなと感心。お茶の緑は、とてつもなく深かった。最終工程の石臼挽きの部屋では、何百台という石臼が機械でいっぺんに回っていて(左写真)、ミニマルアートのように目まいを起こしそうな光景でしたが、強烈に香ばしいお茶の香りが充満していて全身にまとわりつくような、えもいわれぬ快感が・・・。
ひと通り工場見学を終えた後、全員に新茶の抹茶と茶団子が振る舞われほっこり。今回に限らず、工場見学をすると、必ず「できたての○×」がいただけるのでこれも楽しみの一つなのでありました。へへッ。
それにしてもお茶にもいろいろありまして、抹茶、玉露、番茶、ウーロン茶、紅茶などなど、挙げればきりがないほどです。しかしこれらのお茶はすべて元は一つ。1種類のお茶の木から作られています。製造方法によって味の表現が違うだけ・・・という事実は、とても素敵なことだと僕には思えます。これを例えば人類に当てはめてみると、いろんな民族・文化があるけれど、肌の色や表現方法が違うだけで元は一つ。みんないっしょにお茶でも飲めば、今より少しは平和な世界になるのかな???・・・などと考えたり。こうしてお茶をすすり、アーッと息を吐き出す瞬間・・・、確かに僕の頭の中は平和です。
さて帰り道は、せっかく宇治まで来たので遠回りして、宇治川ライン→琵琶湖→京都とドライブすることに。山道を走ると、木々の緑が爆発的に美しくて、それを映す宇治川の流れも緑・・・。この日は本当に、おびただしい緑のバリエーションを浴びた一日となりました。