代弁者の快楽

lo-tus2009-01-23

アメリカはオバマ大統領就任で湧いてますね。「スピーチが上手い政治家」というのも久々に見たような気がします。失言が上手いアジアの東の国の政治家ならたくさん見てきましたけれど。
連日のようにオバマ氏関連のニュースが聞こえてくる中で、ひっかかったのは「ホワイトハウス史上最年少のスピーチライター」がいるというニュース。その代弁者はジョン・ファヴロー氏、現在27歳らしい。スタバでスピーチ原稿を書いているらしい。スタバで書き物をしている青年といえば・・・普通試験勉強かレポート提出に焦っていると思いがちなんですが、じつは違った。アメリカを、世界を動かすようなスピーチがコーヒーショップの若者から生まれた・・・これもひとつのアメリカの「CHANGE」かなと思います。
ファヴロー氏は、良いスピーチを書くコツについて・・・
・平易な語彙を用いる
・一文を短く区切る
オバマ氏の身振り、発声、抑揚なども考慮しながら、なりきって書く
と、こんなふうに述べています。

ひと口にライターといっても、世の中にはいろんな種類のライター業があります。しかし上にあるような3つのコツは、広告のコピーライターの仕事術に一番近いのではないでしょうか?実は僕の場合も、ファヴロー氏とは仕事のスケールが違うけれど(メダカとクジラほど違うけれど)、似たような仕事をしている者として、仕事としてのライティングの鉄則を端的に言い得ているなと感心しました。
例えば何か本とか映像とかの媒体を作るため、経営者、学者といった人に取材に行って原稿を作るとき、いいものができるかどうかの分かれ目は、いかに深くその人を理解して書けるか(インプット&アウトプット)ということに尽きると思っています。つまり「なりきり」です。

ファヴロー氏はオバマ氏になりきりやすかったんでしょうね。いい関係が築けたからこそいいスピーチが生まれた。オバマ氏のスピーチの半分はファヴロー氏の言葉だとすると、実は彼は大統領以上にいい気持ちでいるかもしれません。自分が生み出した言葉を自分で話すことなく、「大統領」というメディアを通して何億もの人に届けているのだから・・・代弁者冥利だと思います。

代弁者の「なりきり」は、俳優の役作りに似ているかもしれません。キャラクターの切り替え。自分の気持ちを自由に表現するだけなら簡単。だけど他人の気持ちを表現するためには、乗り越えなければならない壁がいくつもあって難しい。難しいけれど、自分でない誰かになりきること自体に快楽があって・・・、ゲームに没頭するような、自分が溶けるような・・・、代弁者だけが知る快楽です。

注)上の写真はオバマ氏蝋人形バージョン