密室。

lo-tus2009-02-17


「密室」というのは、身の回りにありそうでありません。職場なら周りに仕事仲間がいるし、自宅なら家族がいます。自分の部屋に一人で閉じこもることはできても、やはりどこかで家族の気配や隣のお宅や道路の気配を感じながら過ごすことになります。なんとなく外部とのつながりを感じられる空間なので、やはり厳密には密室とは言い難い。それだから無意識に、あんまり音楽のボリュームを上げ過ぎたり(といいつつ結構上げますけど)、好き勝手に暴れたり大声でシャウトする・・・なんてことは普通やらないわけです。
ところが僕の友人で今、完全な密室づくりに挑戦している男がいます。趣味でオヤジロックバンドを結成する彼はボーカル担当。「歌だけは本気でシャウトしないと練習にならない!」ということで、なんと自宅でいつでも練習できる密室作りを始めたそうな。しかしスタジオのような大袈裟なものではなくて、電話ボックスぐらいの大きさの完全防音の一人部屋。休日ごとにコツコツDIYをしているそうですが、やり始めると奥が深い。防音の仕組み、建材の重ね方、換気の問題、そして寸分の狂いも許されないデリケートな建て付けの技術・・・。既に趣味の域を越えているようなので、完成の暁には感動のあまり「オレ、ロックボーカルやめて、防音技術の道を究めてみるわ!」などと言い出さないかと心配してしまうほどです。さあ男の桃源郷、史上最小の密室は無事完成するんでしょうか!?


密室。世間との断絶と引換に、完全なる自由が得られる部屋。
密室。無数のミステリーで犯行の舞台に使われる禁断の部屋。
密室。なんとも秘密めいて、魅惑的な響きのする部屋ではないですか?


ところで、映画の中にも印象に残る密室がありました。「シャイニング」by スタンリー・キューブリック。冬の山荘という世間から隔離された巨大な密室で、世捨て人のように過ごしたら少しずつ何かが狂い始めて・・・(もっとも一人きりではなくて、妻子 + たくさんのゴーストがいっしょでしたけど)。
もし自分が冬の山荘管理の仕事を頼まれたならば、やっぱり喜んでに引き受ける可能性大です。最初のうちはウキウキと自由を満喫するでしょけれど・・・一体何日間耐えられるか、これは興味のあるところです。意外と3日ぐらいで泣き言を言い出しそうな気もするし。
密室における自由の鮮度にも賞味期間があるような気がします。やはり人間、他者との関わりの中で自分というものを保っていけるものだと・・・。「オレは孤独だ!」なんて言ってるヤツは大間違いで、本当は人様のおかげで孤独を感じさせていただいているだけなのだと思います。本当の意味で永劫に孤独になったら・・・、多分恐い。
まあとりあえず期限付きで入れる密室、どこかにないでしょうか?