氷の世界

lo-tus2009-03-02

2年ぶりにひらかたパークスケートリンクへ遊びにいってきました。やはりブランクがあると感覚を忘れていて、最初リンクに踏み込んだときは、何とも言えない恐怖感があります(2年前もそうでした)。リンクの縁に設けられた「手すり」だけが、世界一頼もしい存在・・・。「どうか見捨てないで」と両手で縋る感じ。(かなり情けないので、これ以上の描写は省略)
おまけにこの日は、ひらパースケートリンク今年最終日で人はごった返すし、春めいた陽気で、氷が溶け出してリンクのあちこちに水たまりができているような状態。こんなリンクでコケようものなら恥ずかしいだけじゃあすまない、というイヤな予感がしたのです。全身に冷水を浴びてしまえばそれだけで帰りたくなること必至。自ずと緊張感が増幅します。それでもヒザをガクガクさせながらも、リンクを2週もすれば氷上の感覚が一気に甦ってきて、ピンチを逃れました。あとはそれまでのへっぴり腰が嘘のように、自由に滑れるようになるんですが・・・。

記憶とは不思議なものですね。頭で思い出す記憶と体で思い出す記憶とがあります(両者は根っこではつながっていると思いますが)。「今まで何度かスケートをしたことがある」という頭の記憶はあるのに、体の記憶が少し遅れて輪唱のようについてくる。ジワジワと体内の記憶の糸がほぐれ出せばしめたもので、あとは精神的な努力をしなくても勝手に体が動くようになる・・・その体と心が溶け合うようなプロセスが快感です。

それにしてもただ滑るだけの遊戯に、たくさんの老若男女が団子になって熱中する光景を眺めると、少し可笑しいような気持ちになってきます。リンクの中では、大人も子どもも区別が無くなるというか。全員子どもの表情に戻るのではないでしょうか?
普段大地を踏みしめて歩いているときの力学とはまたちがう力学が支配する世界。急に止まれないから、少し遠慮がちな、人と人の美しい距離感が生まれる。なんとなく身のこなしが優雅になった自分をイメージする(客観的に見ると全然だとしても)。こんなにツルツルの舞台上では、ケンカやもめ事の類いは起こりにくいのではないだろうか(第一、暴れるヤツほど確実に転んで自滅する)。そして氷の住人・ペンギンや白熊の気持ちだって考えてみる・・・。みんな日常の重苦しいコンクリートの世界からエスケープして、心地よいスピード感と浮遊感が与えられる夢幻の世界・・・。

「スケート楽しい、上達したい!」と、来るたびに思うのですが、今年の初滑りが滑り納めとなりそうです(こんなふうに思うのは気力の問題なのですが)。また1年後に滑りに来て、同じことを繰り返しそうな気がします。そうやって氷の世界は、再び記憶の中の世界に戻っていくんです。