なおみ

lo-tus2010-01-10


「なおみ」と言っても、谷崎潤一郎ではありません。谷川俊太郎・文、沢渡朔・写真の1982年発表の絵本。日本人形「なおみ」と少女の交流・愛憎(?)を描いた作品です。最近家族がこのような絵本を入手したので、僕は「谷川俊太郎」の名に魅かれて初めて読んだのですが、それはもうゾッとするほど良い絵本でした。
絵本とは言うものの全編写真で、日本人形と少女のツーショットなどビジュアル的に強烈ですし、谷川さんの詩もやっぱり鋭敏。これを少女時代に読んでトラウマになった女子も多数いるのではないでしょうか?

しかしまあ日本人形と少女の組み合わせというのは、どうしてこんなにエモーショナルなんでしょう?(その場合、少女の髪形もおかっぱ)今、リカちゃん人形で遊んでいる女の子はよく見かけますが、日本人形と対話している少女など、あまり巷で見かけませんよね?もしいたら、「恐怖・あなたの知らない世界」を想像してしまうほど。しかしリカちゃんが、底抜けにハッピーで、ありもしない理想の世界の住人なのに対して、日本人形「なおみ」の住む世界は、母から娘へ代々受け継がれた時間を想起させ、人形にも血が流れているのではないかと思わせるほど、陰影があってリアルな世界です。ちょっと恐ろしいけれど、本当に感情移入するなら、やはり日本人形のほうでしょう。

僕は、大抵の男子と同じように、幼年時代にも人形を溺愛した経験などないので本当のところは分かりませんが、女の子は人形を通して見えないものを見るし聞こえない音を聞く。そして自分と人形の境界を溶かしてしまうほど寄り添うけれど、ある程度成長すると忘れたり捨てたりもしてしまう・・・。ただ、それでお終いではなくて、母親になった時に思い出して、人形を娘に譲ったりして。そんなふうにして「なおみ」はいつの時代にも居るし、人格も時間も超越した存在なのかなと・・・。


 なおみは みる
 いつも
 びっくりしたように
 めをみはり
 なおみは みる
 わたしには
 見えない とおくを