日本のロック、加工音楽の軌跡

日本のミュージシャンがまともにロック、ジャズ、ソウルなんかに取り組んでも、何か「壁」があって、元祖である英米諸国に追いつけないでいるのではないかと思っている。やっぱりそのー、気候、風土、遺伝子の違いか…?
しかしこんな日本にも時たま、世界のファンを躍らせるロックミュージシャンが登場している。それは決してストレートなロックではなくて、世界のいろんな音楽を寄せ集め再構築した「加工音楽」。やはり日本はテクノロジー加工貿易、それから幕の内弁当の国である。世界の食材を同じテーブルに並べ、はいいただきまーす、と違和感なく食べるこにかけては世界一!

●80年代のYMO
言わずとしれた本家テクノ。初期のエキゾティックテクノ、中期のアヴァンギャルド、後期の歌謡ポップスと、ファンを裏切りつつも惹きつけてゆく変貌ぶりがクール。テレビゲーム、ウォークマンYMOは日本の三大発明品!しかし、今のラップトップに比べると、YMOはなんて普通のロックバンドなんだろう!

*『Technodelic』1981
 世界初のサンプリング(≒加工音楽)アルバムが東京から生まれたのは必然。ポップスを変えた1枚。「サージェントペパーズよりもテクノデリック!」という人も結構多かったり。

●90年代のピチカートファイブ
実は80年代のデビュー当時からファンである(「動物園のワニ」は名曲!)。古今東西のおしゃれ音源&アイテムを見つけては、懐かしくて新しい世界を見せてくれた。メロウ&キャッチー。シブヤを制圧し、フレンチファン層を拡大させた文化親善大使としての一面も見逃せない(笑)。なんたって女王陛下のピチカートファイブ。音楽、アートワークを含めて、それまでの日本にはあんなに趣味のいいものはなかったなあ〜。

*『Romantique 96』1996
 名曲ぞろい。好きです。いろんな人が東京を描いてきたけど、ピチカートの“Tokyo”はとんでもなく甘美な街。このジャケットの色使いは、ゴダールの「ウィークエンド」のタイトル映像を思い出した。

●00年代のバッファロードーター
前作「シャイキック」(大傑作!)続いて、最近出た「Euphorica」もスゴかった(現在愛聴版)。聞こえてくる音はパンク+ニューウェイヴ+ジャーマンエレクトロ+ディスコ+ミニマル+…ほかいろいろ。これだけいろいろ混ぜながら全体的な仕上がりは明解にロックしているところがいい。職人的というよりも、ごく自然に音楽加工術を会得している新世代。

*『Pshychic』2003
 ミニマルでトランシーなギター、全体を貫く人力グルーブ。しかもロックで汗かく快感。バンドとしての勢いは全盛期のトーキングヘッズを思い出させる、といってもこれは褒め過ぎではない。


みんなに共通しているのは、あらゆる音楽の引用、それにアルバムごとにコロコロ変わる作風。こういう音楽をやると、まじめな音楽評論家の先生はすぐに「地に足のついてない、寄せ集め音楽」などという批評を載せる。これって、ぜんぜん分かってないナー。寄せ集めほど素敵でワクワクするものはないのに!