歌謡曲で行こう!

lo-tus2007-11-23

ミュージック・マガジン12月号』が「帰ってこいよ、歌謡曲」という珍しい特集を組んでいて、これがなかなか面白かった。中でもびっくりしたのが西城秀樹インタビュー。彼は70年代からアイドルで(小さい頃僕もみんなも「ローラァ〜!!!」と、力の限り叫んでました)、今も「忘れ去られないアイドル」として活躍されているスゴイ方です。あのパワーはどこから来るのか?と思ってましたが、彼はやはり単なるアイドルではなく、すごく「洋楽」にも造詣が深かったりして、受け答えも実に熱くてクール。ヒデキ、見直しました。その発言を一部引用させていただくと、「歌謡曲とは?」という質問に対して・・・
「生活の中に入っている。たとえばの話、お母さんが包丁トントンってしながら“やめろっといわれても…”って歌う。それはその曲が好きかどうかってことじゃないですよ。そういうもの、というのが一つ。もう一つは、社会現象なんですよ。歌謡曲が、音楽があるからこそ高度成長が出来たんだっていうのはありますよ。テレビが普及して家族みんなで見ていた…、生活にも密着していた」
そうです、歌謡曲とは好き嫌いというよりも、「思わず口ずさんでしまう歌」なのです。その時代の社会の空気にジャストフィットして一体感を作れるような、一過性の音楽ということなんですよね。そういうことを理解した上であえてアイドルを演じていたヒデキさんだからこそ、したたかにここまでやって来られたのかなと思います。今もう50代半ばだそうですが、ゼッタイ少なくとも60までは続けてほしいです。そして「ヒデキ、かーんれきぃ〜!!!」でキメてくれるはずです!きっと。

さてさて僕は普段歌謡曲なんてほとんど聴かないし、だいたい今歌謡曲なんて存在し得ないでしょ?家族みんなでテレビを見る世の中ではないから。唯一、その年の流行歌のおさらいとして年末NHKの「紅白」はチラチラと見たりはするんですが、昔の歌謡曲全盛の頃の濃厚な紅白に比べて、今は残念ながら雑多な歌番組にしか見えません。今の社会状況はNHKの責任ではないにしても、ただ「家族をもう一度テレビの前に引き戻そう」という無理な意図がミエミエで、かえってしらけさせてしまっているのではないでしょうか?あの姿勢には現実とのズレを感じます。
そういう自分も10代からいわゆる「洋楽」のほうに傾いてきたので、「歌謡曲で団らん」な世界を破壊する側だったことは確かです。しかしいろんな音楽に触れた後、今でこそ良さが理解できた古い歌謡曲、今では作れないような好きな曲はいっぱいあります。その中から最後に3曲かけてお別れしましょう。ごきげんよう、さようなら。
  
*左)「リンゴ追分」美空ひばり(写真はイメージです)
出だしの馬追歌のリズムからぐっときます。歌も曲も天才の技。音楽史に輝くマスターピース
*中)また逢う日まで尾崎紀世彦
日本人シンガーは、むこうのソウルシンガーなどに比べると、DNAの差からくる声量の違いは致し方ないところだけど、そんなコンプレックスを吹き飛ばすかのように歌うのが尾崎紀世彦さん。気持ちいいだろうな。
*右)「他人の関係」金井克子
デビッド・リンチが映画に使ったプレスリー・ソングと同じぐらいカッコよかったのが、石橋義正監督が「狂わせたいの」で使った「他人の関係」。とてつもなくブルーな大人の世界です。