2つの“Live”

lo-tus2007-12-12

ウチのレコード棚にもいろんなジャンルの「ライヴ盤」というのが結構な数あるんですが、その中にあって、何度聴いてもシビレてしまう極めつけの2枚があります。そして偶然、この2枚はアルバムタイトルが同じ。ただ単に“Live”と名づけらた名演。お互い70年代初頭に、さほどキャパの大きくないクラブで録音されたソウル・ジャズ&ファンクという共通点もあります。

Donny Hathaway“Live”(1971)
これはもう、好きな人が本当に多い名盤。自分の場合もその昔、このレコードを聴いて「カッコええ!」と正座をして以来、今に至る音楽の趣味にいくらかの影響を受けることになりました。Donny Hathawayの歌の上手さ、伸び、節回し・・・、すべてがSoulです。同じように、熱いグルーブの上で跳ねたりうねったり延々と紡がれるクールなエレピのプレイも神業に近い。1曲目いきなり「What's Going On」、原曲の浮遊感は捨て去ったアレンジで、しっかり歌い倒すのが彼のスタイルなのですが、これがまた絶品です。カバーを歌うことによって逆にDonny Hathawayの個性を際立たせることになりました。それぞれの曲のイントロが始まるだけで歓声が上がる、あの呼吸は鳥肌モノ。このアルバムは演奏者だけでなく観客も音楽の一部になってます。



The Wooden Glass feat. Billy Wooten“Live”(1972)
ビブラフォン奏者Billy Wootenのグループのインスト・アルバム。10分に及ぶ1曲目からビブラフォンのクールな金属音と、リズムギターハモンド、ドラムが生み出す人力ファンクビートが幾重にも降り注ぎ失神者続出(?)。かと思うと2曲目はロジャー・ニコルズのカバーでメローに泣かせてくれます。グルービーもメロウも織り交ぜた選曲が素晴らしく、この人ホントに盛り上げ方を心得ていらっしゃる。こちらも観客の歓声が尋常じゃなくて、ノリにノッた観客がホイッスルを吹きはじめ、バンドの音の一部のようになってしまっているところも小さなクラブならでは。でもこのCDにはただ一つ欠点があって、それはボーナストラックとして最後にリミックスが追加されていること。興醒めなので聴かないことにしています。


この二人の“Live”と掛けて「雪の中の露天風呂」と解く。その心は???体ほかほか、頭ひんやり。どちらも熱さの中のクールネスがあります。小編成のバンドメンバー全員、すごいリズム感で、鍵盤楽器も弦楽器も、打楽器のように使ってしまうような絶対FUNK音感みたいなものがあって・・・思わず踊り出さずにはいられない「天然グルーブ」のエンジンになっているような。コンピュータには表現できない揺らぐビートの快楽・・・。あのAretha Franklinの「Live at Fillmore West」も71年だから、 70年代初頭のアメリカにはああいう天然グルーブがあふれていたのかと思うと、うらやましいばかり。
またJazzと同じようにSoul Musicも「名曲ではなく名演があるのみ」と言えそう。彼らは、どんな曲であろうと独自のスタイルで消化し、まったく自分の曲にしているところもすごい。こんな演奏を聴いていると、アルバムのコンセプトやタイトルなんか必要なくて、なるほど、ただ音を楽しむ“Live”としか言いようがなくなります。