フランスは愛と自由を歌い続ける

lo-tus2008-04-07


「ディスクガイド」という類いの本を、最初から最後まで読み込むことはあまりないけれど、この本に限っては隅々まで読んでしまいました。タイトルは『ポップ・フランセーズ名曲101徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける』。1968年(5月革命の年)から現在までの40年間の、フランスのヒット曲101を紹介した、一応ディスクガイドという体裁のものです。
中身を読んでみると、単なる音楽紹介ではなくて、フランスの社会・政治史、ポップカルチャー史、またアーティスト個人史としても読めて、本当に楽しめました。というか、これらの事柄は、アーティストの中で分け隔てがないような気がします。つまり愛を語るように、政治や文化の話をするような熱い人たちなのです。
キーワードは「愛と自由」。よくフランスからはデモやストライキのニュースが入ってきて、「フランスの若者って、極東のどこかの国と違ってなんて政治に熱心なんだろう!?」と、感心したものでした。しかしそれは必ずしも当たっていなかった。正確に言うと彼らは政治に熱心というよりも、「愛と自由」を妨げるものに対しては、とにかく「Non」を突きつけるのが礼儀のようなものだろうかと想像します(日本人が義理とか人情を重んじるように)。歴史上、さまざまな異国の民や文化を受け入れてきた国ならではの気概みたいなものを感じます。そして彼らが生んだヒット曲の数々は、どこかしら「ボヘミアン讃歌」の響きがあります。
この本を読んで、あらためて思ったのはやはり1969年は頂点かなと。フランスではもちろんゲンズブールバーキンの「69はエロの年」。同時にアメリカではウッドストックがあったわけで、両方で「愛と自由(精神と、肉体的な意味でも)」にみんなが熱狂した・・・というのは偶然ではないと思う、多分。
68年の革命の際に街に貼られたスローガンが、なかなかイカしてたので引用しておきます。
「禁止することを禁止せよ」
「敷石をはがすと砂浜がある」
「ロスタイムなしに生きよ!」
「美は街頭にあり」…

そして今日帰ると、テレビに映し出されたのはパリの街で、オリンピックの聖火リレーが2度消えたというニュース。相変わらず、いい意味でも悪い意味でも、かの国はまた盛り上がっているらしい・・・。