Wood Colors

lo-tus2008-06-26

最近仕事で、エコ&リサイクル関係の企業を取材することが多いです。そんな中で、あるクライアントの広報担当の方から「読んで勉強してください」と教えられた本がこれ。『木の家に住むことを勉強する本』。最初は、スローライフの本かな?それとも建物探訪?はたまたDIYの本か?・・・そういう流行りの実用書の類いを想像したのですが裏切られました。しかもうれしい裏切り。そういうことも含みつつ、もっと深くて面白い特集記事が多く、仕事で必要とされそうな範囲以上に読みいってしまいました。
まず、最近エコ・健康住宅という文脈で見直されている「木の家」ですが、その快適性について、温度や音の伝わり方、人体に及ぼす影響など、イメージではなく実証データで説明してくれたことに思わず感心。
さらにこの本が提起しているのは、そういう感覚的な価値だけではありません。ポイントは「日本の木で作る日本の家」ということ(これ重要)。家ができるまでの木の流通経路、日本が育んできた木の文化、そして最近の環境問題(CO2対策、バイオマスエネルギーとしての森)まで掘り下げます。
問題の始まりは1980代ごろ。輸入材や合成建材に押されて日本の木が消費されなくなり、それにともないズタズタに衰退してしまった日本の林業里山の荒廃、それに端を発して森が栄養を送っていた下流の川や海の生態系までが破壊されるという思わぬ事態・・・。
本の森の役割は大きいのだと、とても勉強になりました。原生林は別として、日本の人工林は伐採して植林して、手入れをして育てていくというサイクルが、健康な森を保つために必要なんだそうです。近代以前は、日本には木の家しかなかったので、それができていた。日本人は気候に適合した日本の木の家に住むのが一番合理的なのではないか???とのことです。
それから取り上げられていた話題で、もう一つ書いておきたいのが、日本の木工職人、大工さんの技術のすごさ。基本的に僕はモノづくりをする人の話を聞くのが好きです(ある種の哲学を持っているから)。いろんな木の特徴を熟知し、乾燥すると曲がったりする難儀な自然素材を相手に、その変化をも頭に入れ、本当に美しく組み上げていく・・・。世界に誇れる今の日本の技術の原点って、例えば寺社建築や仏像といった超緻密な木工の手仕事にあるのではないかとさえ思っています。職人さんも昔に比べて数が減っているようで、こちらも気掛かりです。がんばってほしい。
しかしまあ、一つのもの、一つの場所だけを見つめていてはイカン・・・、ということですね。一軒の木の家にしても、それが生まれた森、自然の生態系、木を育てた人や作った職人さんの力・・・、実に多重構造です。仏教では因果とか縁起というんでしょうか?いろんなものはつながって、今そこに存在しているような気がします。