アート・ロック

lo-tus2009-01-08

連夜放送している海外ドキュメンタリー7回シリーズ「みんなロックで大人になった」を見ています。第2回目のテーマが「アート・ロック」で、僕も大好きな70年代のバンドもたくさん登場して面白かったです。昔のライブ映像は、過激な音楽と奇抜なメイク・衣装でもう大変なんですが、その後現在のご本人が登場しインタビューで振り返る・・・。するとおおかたの人はぐっと前頭葉が広くなり、悟りを開いたお坊さんのようにシブイ大人になっているんで、ある意味ホッとします。ピンクフロイドの面々、ベルベッツ、ブライアン・フェリー&イーノ、ピーター・ガブリエルフィル・コリンズなどなど。ただしデヴィッド・ボウイだけは、昔とは違うけど今なお美しさをキープ。やはり宇宙からきた男でしたか?
そういうアート・ロックの主役達のお話を聞いていてスゴイと思ったのは、彼らのほとんどが敬愛するミュージシャン、シド・バレットのこと。彼こそアート・ロックの総家元と言っていいのではなかろうかと思います。ピンクフロイドを創りながら早くにドロップアウトしたけれど、脱退後のピンクフロイドにもシドの影はずっとあるし、またシドが残した音はいまだに多くのロックミュージシャンの中にDNAのように伝達されています。ロックがまだ反社会的なものだった頃(大人になる前=ロックの青春時代)、それを身を持って体現して誰よりも高いところまで行って、ついに戻ってこなかった人・・・。天才と狂気は、常に友達なのです。
ところで「アート・ロック」と呼ばれる種類の音楽は、アートスクール出身のミュージシャンが始めたものなので、音楽はもちろんだけどビジュアル抜きには語れません。時には「アート」なのか「キテレツ」なのか判断に悩むこともありますが、まあそのギリギリのところが面白いわけです。
そこでもしビジュアル大賞に投票するならば、僕はビーター・ガブリエルに1票。当時のジェネシスはメンバーのルックスが地味で、ボウイやロキシーの面々と比べるとどうしてもスター性に欠けた。そんな状況を打開しようとピーターは考えました。そして突然赤いドレスとキツネのかぶり物でステージへ登場。観客はもちろんメンバーも唖然としたそうです(メンバーにすら事前に知らされていなかったので)。演奏の後、楽屋でどんな反省会が行われたのか、ピーターがどんな言い訳をしたのかは知りませんけど・・・。ピーター・ガブリエル=まっすぐな人、という印象はこのエピソードからも僕の中で確かなものになりました。この衣装のアナーキーぶりは、アート・ロックというよりも、精神はほとんどパンクでしょ?ねえ。