音の海

lo-tus2009-03-08

本の帯に「1889年、ドビュッシーはジャワ音楽に魅せられた。以降、音楽は、異文化、自然、環境の放つ音と対峙し変容していく。・・・」とあって、ドビュッシーもジャワ音楽(ガムランなど)もファンである僕としては、さっそく興味をそそられる本でした。
著者はデイヴィッド・トゥープ氏。音楽や音そのものに対する思索的、散文的、詩的音響論です。この本に登場するのは、サティ、ケージ、イーノ、ラ・モンテ・ヤング、クラフトワーク、サン・ラー、エイフェックツイン、アメリカインディアン、アマゾンの原住民、イルカたち and more・・・という音の求道者ばかり。音楽とは何か?、音とは何か??・・・ということを根本的に考えさせてくれます。
「音の海」というタイトルが良いです。海と音楽は似ています。水の波と空気の波。お互い延々と打ち寄せては引いていき、時々キラキラ光ります。
今自分たちは、普段本当に無数の音に囲まれて生活をしています。いわゆる「音楽」だけではなくて、自然の音や機械の音、その他微妙なノイズが無数にあって、まさに音の海を泳いでいる感じ。
ヘッドホンで耳を塞いでいると、パッケージ化された「曲」しか聞こえなくて、音の「響き合い=波の戯れ」が削ぎ落とされてしまうのであれは損だなと思います。
かのドビュッシーは自らの信条を「人間以外の言葉を聞くべし。風の音と波の音だけを」と言ったそうです。格言。
ある作曲家が無音の世界を欲しがって、防音設備を徹底的に築いたところ、最後に聞こえたのは自分の心臓の鼓動と血潮の流れる音だったとか。そこで、人間完全に無音の世界に存在することは無理だということが分かった。心臓はビート、血潮は究極のドローン音楽。そうなるともう人間自体が楽器であり音楽であるとも言えます。「No Music, No Life」。生き物にとって音・音楽は水や空気と同じ・・・、いやそれ以上に生きてる証しのようなものかもしれませんね。