砂漠の音楽

lo-tus2009-06-25

「Paris, Texas」はヴェンダース監督1984年の有名な映画。好きな映画で何度か見ているのですが、ものすごく音楽の効果も絶大だった作品として記憶に刻まれています。ライ・クーダーのスライドギターの乾いた叙情。あんな音を出せるギタリストは他にいません。
映画は、主人公で記憶喪失のトラヴィスが突然テキサスの砂漠に現れさ迷う、荒涼としたシーンから始まります。あの状況を音に置き換えるならば・・・やはりもうライのギターしか思い浮かばないほどです。
♪Paris, Texas

ところで、ライ・クーダーの音楽・音色が深く心に残っているのは、あのシリアスな映画を思い出すからというばかりでなく、映画に比べたら全然シリアスさに欠ける自分の日常生活にも、実はぴったりのサウンドトラックとして、たびたび鳴り響く瞬間が訪れるからなのです。
もちろん自分が住んでいるのは砂漠でもなければ、いつも孤独にさ迷っているわけでもない。しかし都会に住んでいても、時おり「砂漠」を感じたり、荒涼とした大地に立たされているような気持ちになることって皆さんありませんか?
例えばですよ・・・、電車に飛び乗ろうとしたけれどギリギリ間に合わず、一人ホームに取り残された時とか、「これは面白い!」と思って他人に教えたジョークがまったくウケなかった時とか、ティーンエイジャーの奇妙な話し言葉がほとんど理解できなかった時とか・・・。他にもありますが、思わず茫然としてしまうシーン、自分のアイデンティティーや居場所を見失いそうになったシーンで、ライ・クーダーのスライドギターが何度でも甦り、頭の中でボリュームを上げるんです。